AIという言葉は世間に広く定着した感があります。すでにAIはいろいろなジャンルで導入されていて、中には将来的には自分たちも活用したいと思っているところもあるでしょう。AI開発にはいろいろなプロセスを踏んで進められます。一般的なAI開発の流れについて、ここでは詳しく見ていきます。
構想フェーズ
AI開発におけるファーストステップは構想フェーズです。簡単に言えば、どんなAIを開発したいのか企画立案段階といえます。具体的に何をすればいいかについて以下にまとめました。
課題を明確にする
まずはなぜAI開発しなければならないのか、開発することでどんな課題を解決すればいいかをはっきりさせましょう。そのためには自社の抱える経営課題を洗い出してみましょう。その中でAIによって解決できる項目がないか確認することです。ここで重要なのは、AI導入を前提にしないことです。導入そのものが目的になると、開発途中で判断を誤る可能性があるからです。
課題の解決がAI開発の目的になっていくはずです。この部分は明確にしておくべきです。そしてAI開発チーム全員が共有しなければなりません。共有できていないと、メンバー間で最終的な出来上がりのイメージに齟齬をきたす恐れがあるからです。
ROIの想定
この段階でROIをしっかり検討することも大事です。ROIとは「Return On Investment」の頭文字をとったものです。日本語にすると「投資利益率」とか「費用対効果」となります。AI開発してきちんと利益が出るのか、どのくらいで目標達成できるのか具体的な数字で設定しましょう。AI開発の結果、きちんと利益の出る見込みが立つのかは実際の開発手順に移る前にチェックしておくべきです。
AI開発をする場合、かなりの投資額を要するからです。どのようなプロジェクトによって違ってきますが、少なく見積もっても数百万円単位のコストがかかると思ってください。案件によっては1,000万円を超えるプロジェクトになる可能性もあります。
課題とROIが具体体に決まったのであれば、AI開発のためのプロジェクトチームのメンバーを選定しましょう。内製する場合もあるでしょうが、アウトソーシングを検討している会社もあるでしょう。アウトソーシングを検討しているのであれば、どこに委託するかをこのタイミングで決めてください。
実際のAI開発の流れ
AI開発の構想フェーズがまとまったところで、具体的に開発フェーズに突入します。では具体的にどのような手順を踏んで開発を進めるか、基本的には3段階を経てAI開発を進めていく形になります。
PoCフェーズ
まずはPoCフェーズになります。PoCとは「Proof of Concept」の頭文字をとったものです。前段階である構想の証明段階と考えてください。構想フェーズでAIの目的を明確にしたでしょう。これが技術的に実現できるかどうか、具体的に検討する工程です。
具体的な検証方法ですが、まずモックアップを開発します。これは実際に開発するAIの仮モデルという位置づけです。そして機械学習やディープラーニングを進めていきます。そして想定していた制度を出せるかどうか、学習を進めるにあたって必要なデータは質量ともに確保できるかを検証します。処理スピードはどの程度か、出力にミスがあった場合でも問題なくオペレーションを回し続けることができるかもチェックします。もし実現性があると判断できれば、次のフェーズに移行します。
実装フェーズ
次に行うのは実装フェーズです。この段階では先ほどのモックアップの開発結果をベースにして、最終的に利用できるシステムを完成させる過程になります。開発を進める前に本番環境を実現するために必要な要件をはっきりさせます。そしてAIモデルの最終化を進めていきましょう。開発できても、思い通りに機能しない可能性も十分あります。完成したところで、テストを実施しましょう。もし問題点が発生すれば、その部分の見直しや改善を進めます。開発とテストを繰り返し行って、使用できる状態に持っていきます。会社における実務オペレーションのことも検討したうえで、稼働につなげていきます。
運用フェーズ
AI開発ができたところで、実際の運用フェーズに段階を進めていきます。運用フェーズでは、PDCAサイクルを回していきながら作業していきます。保守作業でシステムが安定して稼働できているか、常に監視していきます。また定期的に点検して、問題や課題は現れれば、それに適切に対応していきます。また構想フェーズの段階で設定した目標やROIを達成できているかもモニタリングする必要があります。必要に応じて、学習のためのデータの追加や調整も行います。
よく「データをたくさん入れれば精度も増すだろう」と思っている人も多いようです。しかしむやみやたらにデータを入れてしまうと、誤ったデータや必要ないデータをAIが学習してしまう恐れがあります。その結果、むしろ精度が下がってしまう恐れがあります。本当にAIの進化のために必要なデータなのか、慎重に吟味する必要があります。
AI開発を外注する際の業者選びのポイント
AI開発をしたいけれども大企業でない限り、内製化をするのが難しいかもしれません。人材が足りないからです。その場合、アウトソーシングで外部の専門業者に委託するのも一つの方法です。AI開発会社はいろいろとありますが、依頼先を選ぶポイントについてここで解説します。
これまでの実績
AI開発会社選びの際の最重要ポイントといっていいです。これまでどのような実績を有しているか確認しましょう。開発会社でも評判のところは、過去の事例についてホームページ上で紹介されているはずです。数はもちろんのこと、自分たちが依頼しようと思っている領域における実績があるかを判断材料にしましょう。
一つ業歴も判断基準となるでしょう。それなりの業歴を有しているところであれば、経験もそれなりに積んでいる可能性が高いです。AIはまだ後発のジャンルですから、業歴5年以上あればそれなりのキャリアを持った企業と判断していいでしょう。
専門性の有無
専門性を持った開発会社に依頼することもポイントの一つです。もし専門的な知識やスキルを持っていないと、複雑なシステムの設計には対応していない恐れがあるからです。すると出来上がったものが、こちらがイメージしているものとは異なるAIシステムが出来上がってしまう恐れがあります。専門性を有しているかどうか、開発会社のホームページでスタッフの経歴を確認しましょう。専門資格を保有しているスタッフがどのくらいいるかが判断基準になります。AIシステムの開発には多大な費用がかかりますので、専門性の有無も慎重に吟味すべきです。
まとめ
AI開発を進めるためには構想・PoC・実装・運用と4つのフェーズによって構成されます。この順番で作業を進めていきましょう。もしうまくいかなければ、前段階に何か問題があるからでしょう。無理に進めるのではなく、前のフェーズに立ち戻って検証することも時に必要です。また自前でAI開発を進めるのが無理な場合、外注する方法も一考です。上で紹介した選び方のポイントをベースに、信頼できる開発会社に発注しましょう。